ちょっとリクもらって、久々にSS書きました。
タイトルは相変わらずバクホンから拝借。
内容は歌詞と全然違うにしても、現代ネタは初かも。
ジャンル的には「オリジナル」になるのかな?
てか最近リア友にめちゃ心配かけちゃって、コレはノルマっす;;
ごめんよー、んでもってありがとー(つд∩)ウエーン
一応、状況は被ってますが…「彼女」は私じゃないし、
「私」も私じゃない方向で…どうぞ悪しからず。
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午後になり、雲行きが怪しくなってきた。
私は鉛色の低い空を見上げ、少し眉根を寄せる。纏わりつくような不快な湿気が、夜雨の訪れを告げていた。
不意に、ケータイが鳴る。
慌てて窓を閉め、主張を続けるケータイを手に取る。待ち侘びた相手からだった。
訊きたいことは沢山あった。伝えたいことも。
だが、相手は私に電話を掛けてきた側でありながら、会話の半分も聞き取れずにいた。
ごめん……もう一度、ゆっくり言ってくれるかな?
ああ、こっちこそごめんね!
そんな遣り取りが、何度繰り返されたことか。
ここ最近、電話の主――彼女との連絡が途絶えていた為に、思わず早口で捲くし立ててしまう。
私は詫びながら、親しい友人の懐妊や、彼女の好きなアーティストのコンサートへ行き、お土産にツアーグッズを買ったことなどを伝えた。
彼女は嬉しそうに、祝辞と謝辞を口にする。
しかし、以前よりも発音がぎこちなく感じるのは……彼女の声が彼女自身で正常に聞こえていない証だろう。
私は胸を突かれる思いだった。
人間の五感の一つ・聴力が衰えるということは、同時に、本人の発声にも支障をきたすのだ。
嘗て彼女は、シンガーだった。
プロではない。厳密な線引きは解らないが、CDも無くインディーズとまでもいかない。肩書きばかり気にする連中は、彼女を歌い手とは認めないはずだ。
それでも、私はリアルタイムで彼女のステージを観てきた。
日々の努力で培われた豊かな声量で、詞に込められた意味を丁寧に歌い上げる人だった。
力強さと優しさを放つ、魂の歌声。
皮肉にも、天が彼女から最初に奪ったものは、小さなステージで観客を魅了した、その「声」だったのだ。
まだ外部との連絡は許されていないと、彼女は悪戯っぽく笑う。医師や看護士に内緒で、私に電話を掛けてきたと言う。私も共犯者だ、と。
あの日倒れてから、まだ十分快復していないというのに。
確かに心配で連絡を待ってはいたが、無理をするんじゃないと咎めると、切実な返事が返ってきた。
「声が、聞きたかったんだよ」
空が、うねりを上げている。
今夜は雷雨になるかもしれない。
おとなしくなったケータイを見つめ、そして再び空を見上げて。
私は雨に先立って、静かに涙を流した。