2/02/2004

散文~Instrumental

【BL系?ポエム】


小さな芽を見つけた。
とても小さく、柔らかい芽。
綺麗な若草色で、瑞々しい。
今は、こんなに弱く小さくても。
きっと、これから強く大きく成長してゆくだろう。


けれど、私は知っていた。
この芽は、やがて私を支配するだろう。
視界を埋め尽くすほどに育ち、やがて私を喰らい尽くすだろう。
いずれ私を壊してしまうだろう。


今、ここで。
小さな芽に翳した、この手を握り込んでしまえば。
もう、この芽に脅かされることはない。
二度と、この芽を怖れることはない。
言い知れぬ昏い予感も、永遠に消える。


震える手の中で、あっけないほど。
ただ静かに終わりを迎える。
その芽。
何も言わず、抗いもせず、己の運命も知らぬまま。
息吹は絶え、憂いも去り。
何故か、虚しさだけが残る。


また、小さな芽を見つけた。
また、昏い予感が生まれた。
何も迷わず。何も感じず。
今度は一思いに握り潰す。


また、小さな芽を見つけた。
また、昏い予感が生まれた。
どうして。
小さく無力な芽は、何度も私を追い詰める。
どうして。
潰しても、潰しても、どこかで新しい芽が生まれる。
何の為に。


こんなものは、要らない。
消えてなくなってしまえばいい。
これ以上、惑わせるな。
これ以上、苦しめるな!!!


いつしか、すべては枯れていた。
乾いた風が吹き抜け、ぬくもりを奪ってゆく。
冷たい雨が地の肌を滑り、遠くへ去ってゆく。
照り付ける太陽は、潤いを道連れに沈んでゆく。
何もない。
憂いも怖れも。
涙も喜びも。


曖昧で脆弱なものをすべて排除した、完全な世界は。
こんなにも残酷に、傷を癒した。
もう傷付かなくていいと。
虚ろに嗤っていた。


風に晒され、雨に打たれ。
立ち尽くす私は、歪んだ満足感に酔い痴れて。
さぞ滑稽な姿だったろう。


凍り付いた大地の上に横たわり。
降り積もる雪に埋もれてゆく。
ふと。
微かに目を開いてみれば、白銀の狭間に。
若草色の、小さな芽を見つけた。


溢れる涙は、凍れる大地を溶かす。
小さな芽は、その地に深く根差す。
風に揺れ、雨を抱き。
待ち侘びた陽の光を全身に浴びて。
次々に芽生え、果てしない海原をつくる。
あるものは樹になり。
あるものは花になり。
視界を埋め尽くすほどに育ち、やがて私を満たした。


見上げれば、あなたの笑顔。
笑い返す私に、差し伸べられる手。


小さな芽を見つけた。
とても小さく、柔らかい芽。
綺麗な若草色で、瑞々しい。
今は、こんなに弱く小さくても。
きっと、これから強く大きく成長してゆくだろう。



-END-