オリジナル読み切りSS・第2弾です。
ある場所をテーマに依頼されたリク小説で、
年内にはアンソロジー本になる予定。
文豪揃いなメンツが、どんな文章(実録等もOK)が出揃ってくるか
執筆に誘ってもらった私自身も楽しみです♪
…私だけ、メル変ワールド全開で浮いてると思いますが;;
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何をお話ししましょうか。
私が見てきた、今までのこと。
私が見ることのない、これからのこと。
誰でしょう? 私を呼ぶのは。
もうすぐ深い深い眠りに就く、この私を。
雪も止み、オーロラも消え、真の闇が訪れる、こんな時に。
ああ、あなたですか。
この地に山道が作られてから数多の人々が訪れましたが、あなたほど小さな訪問者は初めてです。
まだ目も見えず、自ら立つことも出来ない小さなあなたが、冬寂の中で私の存在を感じ取ったのですね。
わかりました。
少しだけ、私とお話しましょう。
私は、ここで一番大きな、木です。
今でこそ大勢の見物客で賑わっていますが、私がこの地に根を下ろした頃、ここは寒風吹き荒ぶ不毛の大地でした。
小さな苗木だった私は、やがてこの地が豊かな森に育つよう、願いと共に植えられました。
その顔はおぼろげですが、私を包む手の温もりは、今でも憶えています。
時を同じくして根を下ろした仲間達もいました。
けれど、成長してゆく過程で皆、私を残して息絶えていったのです。
腕を折られた日もありました。
皮を剥がされた日もありました。
それでも私は、生きました。
死の恐怖に怯え、生を貪欲に求め、倒れた同胞の命さえ糧にして。
こうして生き残った私は、ここのどの木よりも大きく成長したのです。
ああ、あなたの小さな瞳が、まだ開いていないでよかった。
今の私の大きさが、わからないでしょう?
天高く成長した私は、いつしか、周りを見下すようになりました。
訪れた多くの人々は、雪化粧をした私の姿を褒め称えます。
視界いっぱいに舞う雪。夜空に映える七色のオーロラ。しなやかに大地を覆う草木。宝石のように彩るイルミネーション、美しい絵画、月の欠片。それら全てが、私を輝かせるために存在しているような……時折、そんな錯覚に陥るのです。
私を育てたのは他でもない、この地で果てた同胞たちだというのに。
そんな時は、必ず思い出します。
私を大地に植えた、あの温かな両手を。
あれから、どれだけの時が過ぎたでしょうか。
私の、私たちの命は、間もなく終わりを告げます。
それぞれの命が、それぞれの生き方を全うして、大地に還るのです。
命に大小など無く、私もまた、その一つに過ぎません。
私を呼んでくれて、ありがとう。
最期にあなたとお話できて、とても嬉しいですよ。
泣かないで。小さな魂。
涙は大きな産声を上げるために、残しておきなさい。
さあ、本当の眠りの時がやってきました。
今夜も寒くなるでしょう。
暖かくして、おやすみなさい。
私が目を閉じ、あなたの目が開く頃には、世界は新しい光で満たされていることでしょう。